醤油の麹づくり
蒸した大豆と炒った小麦に種麹を加えます
麹づくりは製麹ともいわれ、蒸した大豆と炒った小麦に種麹をつけて繁殖させます。室(むろ)とよばれる高温多湿の密閉された空間で3日間ほどかけてつくられ、適度に人が手入れをすることでよい麹ができあがります。
醤油のつくり手であれば誰もが知っているいるフレーズに、「一麹、ニ櫂、三火入れ」というものがあります。麹づくり、諸味の攪拌、圧搾した醤油に熱を加える火入れが大切な工程であることを示していて、中でも麹づくりは特に重要とされています。
麹づくりの目的は酵素を得ること
麹菌が繁殖をすることで酵素を生み出します。この酵素が醤油づくりに欠かせないもので、大豆のたんぱく質をアミノ酸に分解したり、小麦のでんぷんをぶどう糖に分解する役割を担ってくれます。
よい麹をつくることが、よい酵素を得ることで、よい酵素のおかげでうま味と香りに満ちたおいしい醤油になるための下地ができあがるのです。
室の中に運んで3日間を過ごします
麹菌はカビの一種なので、カビが繁殖しやすい高温多湿の環境をつくります。ただ、麹菌が繁殖をする過程で自ら発熱をするのですが、その熱で死滅してしまったり、高温になることで納豆菌が繁殖してしまったりと良質な麹にはなりません。
そのため、人が「手入れ」といって麹をほぐしたり等の世話をすることで適切な温度を保つ必要があります。すると麹菌が大豆全体をうっすらと白く覆い、さらに繁殖が進むと黄色の胞子を生み出します。
麹室から出て塩水を混ぜて諸味になります
麹室から取り出す作業を「出麹(でこうじ)」といいます。麹菌が繁殖をする過程は、麹菌が菌糸を伸ばしていき最終的には胞子をつくります。麹菌の立場からすると胞子をつくることは子孫を残すことになるのですが、昔の醤油づくりのセオリーはたくさんの胞子をつけることでした。
ただ、この胞子が黄色の細かい粉で、出麹の作業の時は空間全体が黄色に包まれるほどで、マスクも真っ黄色になって作業が大変だという声も聞きます。近年ではできる限り胞子をつけないような製麹をする醤油メーカーが多くなっているように感じます。
蔵の規模によって製麹の方法はいろいろ
大手メーカーも中小メーカーも、製麹の基本原理は同じです。ただ、一度に行う麹の量に応じて製造設備が異なります。上の写真は石川県七尾市の鳥居醤油店さんの製麹の様子です。麹蓋とよばれるお盆のような入れ物に麹を入れて室に運びます。
何十枚、何百枚もの麹蓋を使うこの方法は、昔ながらの製法ではありますが大変な手間がかかります。現代でこの製法を行っている蔵元は数えるほどしか残っていないと思います。