醤油の知識

065|諸味の櫂入れ

前回、酵母添加から発酵までを書きましたが、
今回は発酵期の諸味管理(櫂入れ作業)について書きます。

見学に来られた方から、「諸味は毎日混ぜるんでしょ?」とよく聞かれます。
実際のところ発酵期の撹拌頻度は、作られているメーカーさんによって様々だと思います。

僕が知っている所でも、発酵期に毎日撹拌されている所もあれば、そうでない所もあります。 うちでは発酵初期は間隔短く、酵母がしっかり増殖した後は間隔を長くして行っています。(段階によって2日~5日の間隔)

初期は酸素を沢山送り込んで菌数を増やし、その後は嫌気的な状況でアルコール発酵を促す。 というイメージで、そうしています。 ただ、間隔を長く空け過ぎると産膜酵母が増殖したり、酵母の菌数が急速に減少したり しそうなので、(諸味内部は嫌気的で徐々にアルコール濃度も高くなるため) その辺は日々諸味の様子を伺いながら、という感じです。 

(あくまで僕が現時点でそうやっているというだけで、1・2年後には違うやり方になっているかもしれません)


<撹拌前>



櫂を入れると、発酵によって溜まった二酸化炭素がプツプツと勢いよく跳ね上がります。 



<撹拌後>
ガスが抜けて諸味のかさが下がりました。 



桶の側面に残った諸味は、ヘラで綺麗にそぎ落とします。 



下の写真の左は元々の状態で右がヘラでほどこした後です。
産膜酵母という、香りを悪くする酵母はこういった側面の諸味なんかに寄生しやすいので、 その増殖を防ぐ意味で行っています。(防ぐというより遅らせるという方が正しいかな) 



この作業は僕がお世話になった岡本醤油さんで行われていて、 道具のヘラも岡本さんのを参考にして、自作しました。 

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元