004│黒豆を煮ながら考えていたこと

年末年始はいかがお過ごしでしたか。

私はというと、大掃除をして、黒豆を煮て、親戚のところを回って。 仕事をしていなくても、どこか慌ただしい年末年始でした。たまりを使って黒豆を煮ながら、年末年始、たまりが足りなくて不便な思いをしている人はいないかな、そんなことを考えていました。

休みに入ってすぐの日だったと思います。所用があって会社の中にいたときのことでした。 不意に外から「開けてーーー!!!」と大きな声が聞こえてきて、シャッターも閉めて、イヤホンをつけていたわたしは思わずびくっとしました。

あとから考えると、私が気づかなかっただけで、何度も声をかけてくださっていたのだと思います。「よかった。年末の醤油が足りなくなるところやったわ。」そう言って、ほっとした顔でたまりを買っていかれたお客様。でも私は、その突然の出来事に驚いて丁寧な接客ができなかったなと、今も少し心に残っています。

その後、自宅前で掃除をしていると、今度は年配のご夫婦が何かを探しているご様子。「山川さんのご自宅はどこでしょう?」手には、新桶のクラウドファンディングの記事が載った新聞。 創業者である曽祖父に、仕事のことでとてもお世話になったこと、ずっと恩返しがしたかったことを話してくださいました。

山川醸造は、創業百年に満たない、業界の中では後発の会社です。普段は、伝統という言葉を使うのがどこか烏滸がましいのではないかと感じています。それでも、曽祖父や祖母、そして父の人となりがあって、ここまでつないでこられたのだと実感しました。さっきのお客さんにも、もう少し落ち着いて向き合えたらよかったなぁ……。

振り返ってみると、お客様に商品を届けることは、やっぱり何よりも大切なことなのだと、改めて感じさせられた一年でした。2025年は、グルテンフリーの醤油の需要が伸び、「みのび」と「長良」は現在、出荷量を絞らせていただいています。 たまりの仕込みには時間がかかり、すぐに増やすことはできません。それでも、来月には新しい桶がやってきます。

もう少しの間ご不便をおかけしますが、これからも、ちゃんと木桶のたまりを届け続けていけたらと思っています。