醤油の知識

093|大豆の細工

早くも、仕込みが終わりました。

今年は一つ大きな実験がありました。
今まで蒸した大豆をそのまま製麹していたのですが、
一工程追加して蒸煮後の大豆をカットして製麹しました。

まだ実家へ戻る前、見学させていただいた某所で大豆をカットしている工程を見せていただいて、いつかやりたいとは思いましたがうちの製法に合う機械を見つけられず先延ばしになっていました。機械で大豆を潰さずに切る。というのがなかなか難しいのです。

大豆をカットする事で麹菌が増殖できる面積が増え、
全体の酵素量も増えて分解が良くなる。というのが狙いです。




左:カットした大豆 右:そのままの大豆



一つ懸念したのが、
大豆が細かくなって原料間の空間が密になる事で、温度を下げにくくなるのでは?
と思いましたが、意外に従来と変わりませんでした。



出麹の時に崩した状態。
一つだけ気になったのが、出麹時の水分が従来と比べて少ないように感じました。
表面積が拡がった分、水分も飛びやすいのだと思います。



ちなみに従来通りに仕込んだ桶もあり、
夏まで様子を見て結果が良かったら来年からはすべて変更する予定です。



で、最後に大豆のカット風景。
手前の機械ですべてやる予定が、時間がとてつもなくかかるため 包丁+まな板でみじん切り。という、超ローテクな手法で行いました。(もちろん、みんなから非難殺到です。)
大豆カットだけで2時間弱かかり、大豆が冷めないようビニールで覆って管理しました。

この作業が無駄にならないよう、いい結果が出てほしいです。
そして、来年は大きな機械を特注してみんなに文句を言われないようにしたいです。笑

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元