職人醤油の蔵元

中定商店

豆味噌と溜を造る醸造蔵

中定商店の造る豆味噌は料亭などの料理人の中では有名な存在ですが、その製造現場を見ると驚くばかりです。ご家族とパートさんによる少人数で、超が付くほどの重労働を繰り返しています。

明治十二年創業。

溜醤油の産地、愛知県の武豊町。

溜醤油の蔵元が集まる愛知県武豊町。軒を連ねるように蔵元が密集しているエリアから車で数分の距離に中定商店はあります。趣があって、それでいて上品な建物や看板が出迎えてくれます。

木桶が並びます。最盛期には200本あったそうです。
溜醤油は水分が少ないため、掘り出す作業が必要に。
これだけでもおいしそう。コクのある味噌のような香りがひろがります。

溜づくりは独特

一般的な濃口醤油などを圧搾する際は、ポンプなどを使って諸味を圧搾場まで移動させます。ただ、水分の少ない溜醤油の諸味は見た目は味噌のような形状で吸い上げることはできません。

スコップですくってプラスチック容器に運びます。2メートル以上の高さがある桶の中に入り、スコップですくっては自分の身長よりも高い位置のおかれた容器にうつします。この作業、なかなの重労働です。

蒸した大豆に麹菌を繁殖させた「味噌玉」。

繰り返し行われる仕込み作業

原料は大豆です。味噌玉に麹菌を繁殖させる環境は湿度は70%程度で室温は30度。2日程かけて麹を育てた後、2日間乾燥させます。4日程かけて出来上がる麹も桶に換算して半分ほどなので、何度もこの作業を繰り返します。

この仕込み作業は冬場からスタートするそうで、まずは豆味噌の仕込みをして、次に溜醤油の仕込み。ひと段落するのはゴールデンウィーク頃までだそうです。

溜の諸味を切って布にのせていきます。

切った諸味を重ねて搾ります

この装置を使って搾る準備をします。四角い筒状の部分に諸味を入れます。底は網目になっていて、諸味が底から少し出たところでピアノ線で切断して、写真手前にある布の上に落とします。片方の人が布を四角筒の下に運んで諸味をキャッチし、次に反対の人が同じ作業をしてを繰り返し、それらを積み重ねて圧搾していきます。

蔵と蔵をつなぐ通路に大量の石が。
桶の上に敷き詰めて重石として使います。この量は圧巻です。

重石の山に圧倒される

濃口醤油の諸味は水分量が多いため、かき混ぜることができますが、溜醤油は水分が少なくてかき混ぜることができないため重石をおきます。石を載せるという製法は味噌づくりに近いのですが、載せる石の量は、溜の場合は一段で、味噌の場合は二段になるそうです。下記の「くみかけ」の作業があるために、石を多くして液面を石のところまで上げなくても良いのだそうです。

くみかけ作業。柄杓で桶の底にたまった液体をすくって上からかけます。

くみかけを繰り返して三年間

液体が底に溜まります。桶には筒が差してあって柄杓ですくい上げることができ、それを重石の上からかける作業を行います。これを「くみかけ」といって溜醤油を造る上での欠かせない作業となるのですが、夏場は毎日、冬場は週に1回程度、すくってはかけての繰り返しを行います。

「醤油づくりって生き物を相手にしているんだって実感するんですよ・・・夏場の敵はカビなんですけど、溜の液体が上に上がってくるんです。自らをカビから守るかのようにね!それが冬場になると石の下に下がっていく。なんとも不思議な光景なんです。」とご主人の中川さん。

溜醤油の汲みかけの様子
中定商店六代目ご主人の中川安憲さん

100年やってきた意地

冬場は仕込み、夏場はくみかけ、そして搾りの作業。年中休むまもなく溜醤油づくりを続けている中川さんにその原動力を伺うと、「美味しいものをつくりたい。まじめな商売をしたいんですよ」という答えに続けて、「やっぱり好きなんですね。味噌づくりや溜づくりが。100年以上続けてきたことなので、意地なのかもしれませんが出来る限りこのスタイルを守ってやりたいなと」。

三年間醸造した豆味噌を搾った溜

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宝山 丸大豆たまり
杉の大桶で3年間、天然醸造させて豆味噌を搾った溜醤油。主原料は大豆と塩のみ。少量の仕込み水のため大変濃厚なうま味を有します。

価格 : 550円+税
原材料 : 大豆、食塩
この蔵元への直接のお問い合わせ
合名会社 中定商店
〒470-2343 愛知県知多郡武豊町小迎51番地
TEL:0569-72-0030  FAX:569-72-0020
https://www.ho-zan.jp/