職人醤油の蔵元

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岡本醤油醸造場

醤油づくりをこよなく愛する

醤油づくりを最も愛しているつくり手、そう聞かれたら岡本さんの名前をあげたいです。ただ、広島県といっても大崎上島はフェリーでしか行けません。昔は島観光のついでに醤油蔵見学に立ち寄られる方もいたそうですが、今では岡本醤油を目指してフェリーに乗る方が多くなってきているそうです。

醤油が大好きで、醤油のことを話し始めたら止まらない岡本義弘さん、女将さん、康史さん、哲也さん。この家族は本当に温かい。そして、醤油づくりに愛を感じる。

瀬戸内海のへそで造られた醤油

広島県の竹原からフェリーで30分。大崎上島町は造船とみかん栽培で盛んな島。この瀬戸内海に浮かぶ人口約9,000人の島に、とっても素敵な醤油蔵があります。

厳選した国内産大豆と普通小麦、天日塩のみを原料に、昔ながらの杉の大桶で造られた醤油は、もちろん天然醸造。30本ある桶の中の醤油たちは、毎日、岡本さんたちに見守られながら熟成の時を過ごしています。

大崎上島に行く交通手段はフェリー。春にはみかんの花の香りが島全体に漂い、秋にはオレンジ色の実が山を埋め尽くすそうです。
白水港から徒歩数分で岡本醤油醸造場が見えてきます。

最高のもてなしって・・・

2008年の原油高の時期に原料も資材も値上がりをし、多くの醤油メーカーは価格を一斉に上げました。ただ、岡本さんは値上げをしなかったそうです。「商売っ気がないっていわれればその通りかもしれないですけどね・・・ただ、醤油を大切に使っていただきたいんですよ!」そして、「できるだけ手間と時間をかけて料理をしていただきたいですね・・・」と岡本さん。

最近は加工品の「つゆ」を使われる方も多くなっていると思います。ただ、例えば、お客様をもてなすときに、「夏の暑い時期は塩分を少し多めに、寒い時期は少し甘みを強くして・・・とその季節、お客様に応じた対応をすることって、最高のもてなしだと思うんです。」

こういった考え方が、岡本さんの醤油づくりのベースになっているので、お話の中にも「自然」や「美味しい醤油」というキーワードがたくさん出てきます。「畑から出来た大豆と小麦に、海のエキスが凝縮されている塩。これらが原料となって日本の四季の中で麹菌をはじめとした微生物の力で発酵・熟成させたのが醤油なんです。」

大豆の蒸し上がりの様子を見せてくれる岡本哲也さん。
下の階にある麹室の中に運ばれます。
綺麗に整えていきます。

家庭料理のための醤油を造ろうと

蔵を継いだばかりの頃は、他の醤油屋もこぞって家庭に醤油を配達していたそうです。「『選ばれなきゃ!』、『使って欲しい!』と思いながら配達をしていると、料理している家から香りがしてきて『うちの醤油の香りだ!』とわかるのです」。

この家では煮しめに、あの家では煮魚にと、味わいやアレンジの仕方が家によって少しずつ違っている光景を感じたそうです。その時に思った「家庭料理」が醤油づくりのベースになっているといいます。

「帰って来た頃は若かったからいろいろ珍しい醤油を造りたいと思っていたけど、家庭を巡って思ったんだ。どの家庭で使っても美味しく楽しめる醤油がいいって。醤油の味もぶれてはいけない。冬の根、春の菜、夏の茎、秋の実もおいしくする醤油を造ろうって」そう話す岡本さんの声は暖かい。

昔ながらの木桶が並びます。
桶に刺さっている棒が「櫂棒(かいぼう)」といって、桶の中の諸味(もろみ)をかき混ぜる時に使います。
混ぜるとこんな様子。時間が経つほどに色が濃くなって均一になってきます。

30本の桶が精一杯なんよ・・・

昔ながらの醤油づくりをしている蔵では大量生産できないと言われますが、それは当然なのです。

蔵を取り巻く自然環境や、蔵に住み着く微生物たちの性格にもよるのですが、醤油の元になる諸味を熟成させる時、人が手をかけずにいると「産膜酵母」と呼ばれる白カビが発生してしまいます。当然、醤油にとって悪い影響を与える存在なのですが・・・

その白カビを防ぐ手立てとして攪拌(かくはん)があります。桶の中の諸味(もろみ)をかき混ぜるのですが、この作業がとっても大変。20石の桶だと容量は約3,600リットル。3トン以上の重さを、攪棒(かいぼう *上写真の棒)を使って手作業でかき混ぜるのです。どれほど大変かは容易に想像いただけると思いますが、この作業を3日毎に行うわけです。それも30本の桶全て!

原料処理場と蔵をつなぐ渡り廊下からの撮影。正面には瀬戸内海、背面には山。そのため、とっても気持ちのいい自然の風が通り抜けます。
蔵の前には海が広がります。

風の通り抜ける蔵

一般的に、醤油づくりは水を使えば、カビの一種である麹菌も使います。しかも、長い時間をかけて熟成させますので、蔵自体も湿気がたまりやすく、カビが発生してイヤな匂いがすることもあります・・・

ただ、岡本さんの蔵は違うんです。醤油の良い香りが広がっています!どうしてだろう?!と考えてみると、それは掃除と整理整頓が行き届いていることと、自然の風が通り抜ける道が出来ているからなのかなと・・・

渡り廊下の奥は山々が広がり、手前には瀬戸内海の海が広がっています。山の木々が光合成をして酸素をいっぱいに含んだ風と、海のミネラルをたっぷり含んだ風が常に通り抜けているのです。これらの風が蔵の中の隅々まで循環しています。常に自然な空気が余分な湿気を運んでいってくれ、新鮮な状態を保っています。

2016年に新設された圧搾場。閉じられた環境で低温に保たれています。
この均一さと丁寧な作業ぶりに唸ってしまいます。
できるだけ平らにするために手で均します。

搾り場の丁寧さ

ドアをあけて圧搾場の中に入るとアルコールの香りに包まれます。「うわぁっ!すごいですね」と口にしてしまう程、しっかりと酵母菌が活躍してくれた証拠です。そして印象的だったのが、何十枚と積み重ねられている風呂敷がきれいに揃っていることでした。

風呂敷を広げて、諸味を入れて包み込むと、1枚の座布団のような状態になります。これを何十枚と積み重ねていくのですが、均等にするには諸味の量と厚みを揃える必要があります。これがなかなか難しく、几帳面な人とガサツな人の性格が明確に反映されてしまう程です。

じーっと作業を見学させていただくと、ゆっくり丁寧に、そして右手で諸味を触りながら平らに均しています。「微妙な凹凸は手で触らないと分からないもので・・・」と控えめに説明してくれましたが、この配慮と文字通りひと手間かけるスタンスが、やっぱり岡本さんの醤油らしいなと感じてしまいました。

岡本康史さん、哲也さん兄弟

岡本さんの醤油愛が伝わってきます

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手造り醤油 濃口本仕込み熟成二年100ml
醤油が大好きで、醤油のことを話し始めたら止まらない岡本さん。国産大豆・小麦と天日塩を杉の木桶で仕込んだ濃口醤油。瀬戸内海の温暖な環境を生かしながら二年間じっくりと熟成。

価格 : 450円+税
原材料 : 大豆(国産)、小麦、食塩

岡本さんの醤油愛が伝わってきます

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手造り醤油 かけ二段仕込み熟成三年100ml
熟成期間の長い再仕込みは、造り手の性格や想いがより濃く味に表れるように感じています。濃厚さと凝縮されたうま味が特徴で、マグロなどの赤身の刺身やソース代わりに目玉焼きやアジフライなどにもお薦め。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆(国産)、小麦、食塩/アルコール
この蔵元への直接のお問い合わせ
岡本醤油醸造場
〒725-0231 広島県豊田郡大崎上島町東野2577
TEL:0846-65-2041  FAX:0846-65-2043
http://okamoto-shoyu.com/