大久保醸造店
微生物に最良の環境を考え抜く
良質な原料を全国から集める。微生物が活躍しやすいように設備に改良を加える。仕込場はオゾン水で洗浄する。湿気がたまらないように壁や床に炭を埋める。ビンはリサイクルする。どれもが素晴らしいのですが、一番の魅力は大久保さんの確固たる考え方だと思うのです。
ありのままを食べたい
「お父さん今日のご飯は何にします?」「任せるよ」。いつも通りのやりとりを経て食卓には旬の食材が溢れ、自家製の醤油と味噌汁が並びます。そして、お孫さんも一緒に三世代で囲みながら、「贅沢をしたいわけじゃないんだ。ありのままを食べたいだけなんだよ」と、それが幸せだと大久保文靖さんは微笑みます。この素材が美味しければ余計な味付けは不要になるという姿勢は、醤油づくりにも共通しています。

小規模だからこその質の追求。手作業も多くなります。

原料の保管庫には国産の大豆と小麦がぎっしり。
「人の手でできるだけ」の量をつくり続ける
原料置場には、産地と等級がしっかりと記載された大豆・小麦・食塩・米が山積みになっています。地元長野の大豆である「つぶほまれ」「ギンレイ」「タチナガハ」、青森の「オクシロメ」や「リュウホウ」、新潟の「エンレイ」をはじめ、岐阜・石川・山形などの等級モノ銘柄がぎっしり。塩も国産、沖縄のシママースといった具合です。
平成十年に麹づくりをするための室を一新しました。「装置の面積は倍にしたけど、つくれる量は同じにしたんだ」と、大久保さんはいいます。「小さな蔵が大手の真似をしてもだめ。安価で均一な醤油をつくるのではなくて、田舎の香ばしさを、もっと前面に出していきたいと思う」と、量ではなく質を追求するコンセプトの室ができあがりました。
そして、私自身この室の形を見て驚きました。醤油蔵が一般的とする室とは形が異なるのです。ある地域の味噌づくりにつかわれていた装置を応用したものです。醤油づくりの主役である微生物にとことん寄り添って、どのような環境をつくるべきかを考えつくしたらこの形になったそうです。



桶には漆が塗られています。床も壁も柱も天井もとても綺麗!
この蔵を人はエコと呼ぶ
蔵と工場の外見はとっても質素ですが、中は効率的になっていて驚くほど綺麗な状態が保たれています。3階で原料処理をしてそのまま2階に落とすと麹室があり、さらに下に落とした1階に桶が並びます。麹を「運ぶ」のではなく、「落とす」ことで移動させる距離は最小限になります。
3階の天窓をあけると1階から上に向かって風が通り抜けていきます。「醤油屋だからってカビ臭いのは嫌い。きれいな味の醤油をつくるには、蔵も工場も綺麗なほうがいいと思っている」の言葉を実現しています。
醤油づくりの主役は微生物といわれます。乳酸菌や酵母菌といったプラスの働きをしてくれるものがいる一方で、マイナスの働きをする雑菌がいることも事実です。大久保さんは桶の内側に住み着く微生物が大切という見解で、それ以外の場所は徹底的に清潔を保つ。桶の外側には漆を塗って、蔵の壁と床下には大量の炭を埋め込み湿気がたまらない工夫をしています。

天井の窓が開くと、ふっと自然の風が入ってきて空気の自然な循環がはじまります。無駄なエネルギーを使わないで温度管理。

工場の3階で原料処理。写真の中央の釜で大豆が蒸されます。使用される水はアルカリイオン水。床などの正常にはオゾン水が使われます。
自然に負担をかけてはいけない
電力を補うためのソーラー発電設備が屋根にのっています。階段で地下室へ下りていくと地下室になっていて商品の在庫置き場になっています。夏でも冷房装置なしでも14度が保たれていて、搾りたての醤油が出荷を待っています。業務用途で出荷する樽やビンは回収してリユースされます。一升瓶をいれるプラスチックケースには「大久保醸造店」の名称が入っていて全国からここに戻ってきます。「醤油は微生物などの自然の力でつくってもらうもの。自然を汚しちゃだめでしょ」と、大久保さんにとってはいたって普通のことなのです。


大久保文靖さんからバトンを引き継ぐ勝美さん。
コラム|大久保さんの木槽タンク
https://s-shoyu.com/knowledge/om/
この蔵元への直接のお問い合わせ
大久保醸造店
〒390-0221 長野県松本市大字里山辺2889
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