発酵と熟成の海外のイメージの違い

「フランスでは“発酵”と“熟成”が、違うものとして捉えられている気がするんです」。 国際発酵・醸造食品産業展のトークセッションで、発酵の専門家・オレガン愛美さんがそう語っていました。

「発酵熟成を経て醤油になります」といった表現を、私たちはつい何気なく使ってしまいます。同じではないけれど、どこか似たような意味合いとして。でも、フランスでは別ものと認識している可能性があって、はっとさせられました。

たとえば、フランスで開催される発酵系のイベントでは、自然豊かな野原にテントが張られ、コンポストが設置されていたりと、「発酵」という言葉には、オーガニックや環境との共生、持続可能な暮らしといった“自然に寄り添うニュアンス”が色濃くあるようです。

一方、「熟成」と聞いてフランス人が思い浮かべるのは、ウイスキーやワインなどの高級品。時間をかけて価値が高まる、洗練されたイメージが強いのはこちらだというのです。

この2つのニュアンスの違いを図にしたものが上の図。縦軸は自然発酵など「発酵」、横軸は高価格帯や嗜好品を連想させる「熟成」。

醤油のように、発酵と熟成の両方の要素をあわせ持つ食品は、日本では無意識のうちに「発酵熟成」とひとくくりにして語られがちですが、本来はこの2つを丁寧に分けて説明することが、文化や価値観の異なる国々と対話するうえで、ますます大切になってくる。そんな気づきをもらった時間でした。