火の料理と水の料理 ― 中国と日本、醤油の進化の分岐点(中国訪問記②)

中国の料理の特徴はなに?

「中国の料理の特徴はなに?」と聞いたところ、「火の料理だよ」という言葉が返ってきました。
ちょうど朝食につくってくれたのは、お粥と焼き餃子、そして、目玉焼き。それらは「焼いた」というより「揚げた」と表現した方がいいくらい。

その料理を前に、確かに!と納得しました。油で調理をするのが前提、というのが中国料理の大きな特徴なのだと。そういえば、少し前にあった国立科学博物館での「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」という特別展。その最初のテーマは「水」だったことを思い出しました。日本はどの地域に行っても透明な軟水がある。これが、日本の料理の根底をつくってきたのだと思います。

肉を食べてこなかった日本人

そして、油から派生して調べてみると、日本人は長らく肉を食べてこなかった、という歴史を見つけました。飛鳥時代の675年に天武天皇が「肉食禁止令」を出してから、約1200年にわたって日本人は表立っては肉を食べてこなかった。そして、油が調理に使われるようになったのは江戸時代から、公然と肉を食べるようになったのは明治時代から。

では、人間に必須の栄養素であるタンパク質はどこから摂るか?それが、魚や大豆。だから、大豆をいかにおいしく食べるかという工夫と発酵の技術と重なり合って、豆腐、納豆、味噌、醤油、といった様々なものが生み出されてきたのだろうなぁと想像していました。

中国と日本の醤油の違い

そして、この流れは醤油の進化にも表れていると思います。
中国の醤油は、油で加熱調理することが前提なので、うま味や色の濃さといった「わかりやすい方向」へ進化する。甕に入れて太陽のもとに置くのも、熱を加えることで分解を促進するわけです。

一方、日本の醤油は油を使わない調理の中で、素材を活かす風味や香りを重視する方向へ進化したのだろう思います。冬の寒仕込みから始まり、麹菌による酵素分解に加えて、春から夏にかけての温度変化の中で、乳酸発酵・酵母発酵を取り込みながら、300種類以上の香り成分を含むようになる。油で調理すれば香りは飛んでしまう。油を使わなかった日本でこそ、香りの醤油が生まれたのだと思います。