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職人醤油ヒストリー(3)3ヵ月の新婚旅行は貧乏旅行

3ヵ月の新婚旅行は貧乏旅行

「伝統産業」というところに何かがある気がしました。よし!そうと決まれば現場に行こうという発想は、当時の営業マン思考としては自然なもので、どう実現させるかを考えていました。そして、友人の自慢話(?!)からアイデアを思いつくのです。新婚旅行の行先がヨーロッパに決まったとのことで、一週間で予算は100万円とのことでした。これをそのまま応用して、国内貧乏旅行で3か月、予算100万円にすればいいのではと思ったのです。そうです。自分自身の結婚式の日程が迫っていたのです。

退職した3日後が結婚式で、妻も同様に仕事を辞めました。二人とも無職の状態で結婚式を挙げることになりましたが、時間だけは自由にありました。彼女の実家である山口県に挨拶に伺い、そのまま北海道まで車を走らせました。旅行ガイドに掲載されている観光地はどこも同じようで数日で飽きてしまうことも実感し、地元の方に教えてもらうスポットの方が刺激的なことも知りました。ただ、道の案内も大ざっぱなのでたどり着けないこともしばしばでした・・・。

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その中で出会った人たちが共通して言うことがありました。「作っているクオリティーには自信がある。だけど売れないよね・・・」というものでした。「どうして売れないんですか?」と伺うと、「大手の大量生産されているものだったり、海外のものだったり、コストでは勝てないからね・・・」というもので、なんとなく、この辺りに自分の立ち位置があるような気がしてきました。

そこで、その旅を通して出会ったものをリストアップしていきました。醤油はもちろん、陶器や漆器、たわしから仏壇に至るまで最終的には300アイテムくらいになったと思います。その中から、今の自分に手掛けることができそうなものを絞り込んでいきました。特に、「日本人に欠かせないもの」「消費者の視点から見たときに、大量量産されたものと、そうでないものの境目が曖昧そうなもの」という基準がしっくりきていました。