醤油の知識

醤油屋が醤油屋を見学する

16人で醤油蔵見学

渋谷ヒカリエで開催された木桶サミットのために、醤油メーカーの若手たちが東京に集まっていました。山川醸造の山川華奈子さんの呼びかけで、埼玉と群馬の蔵見学に行くことに。16名の大所帯です。

同業者が見学をする光景は、かつては珍しいものだったはずです。物流が発達していない時代には、その土地で生産してその土地で販売することが一般的で、隣同士の同業者は激しく競争していました。「かなりバチバチに戦っていたよ」と、昔話を聞いたこともあります。

時代が進み、地元以外にも販路が広がり、隣同士での激しい競争は少なくなっても、業界内にはまだ暗黙の了解のようなものが残っていたようです。醤油にも都道府県単位などで組合組織がありますが、その集まりの宴会の席では仲良く肩を組む一方で、お互いの製造現場には立ち入らないのが普通でした。

他の地域に出向いた際も、観光客を装って蔵見学をすることはあっても、自ら名乗り出て見学することは稀。製造現場には先祖代々の企業秘密があるからという理由です。

ただ、現代の若手蔵人たちは、そのような感覚が薄れてきているようです。先人たちが企業秘密と考えていたことの多くは、実は秘密にする必要がないのでは?!というか、「自分がオープンにすれば、相手もそれ以上のことを教えてくれる」という感覚を持っているようです。もちろん、本当に核となる重要な部分は秘密にしていると思いますが、それ以上に教え合ってお互いを向上させようという姿勢が強まっている印象です。

特に、若手がいる蔵は積極的な設備投資を考えています。今回の蔵見学でも、蔵の改装を控えている蔵人は自社の事情に照らし合わせながら、めちゃくちゃ細かいところまで根掘り葉掘り質問していました。そして、それに対してほぼフルオープンで回答している、この光景がさも当たり前のように広がっていました。

訪問したのは弓削多醤油(埼玉県)、笛木醤油(埼玉県)、岡直三郎商店(群馬県)