薪の直火で八時間、ぐつぐつ煮詰めて仕上げる醤油
「混ぜない」という仕込み
タイに来ています。職人醤油タイを運営してくれているタンタの案内で、バンコクで四代続く醤油蔵、バーンタラートノーイのナットさんご夫妻を訪ねました。初代が中国から持ち込んだ種麹を、自分たちの手でつないでいる伝統製法を守る蔵元です。

甕と天日干し
驚いたのは、まず仕込み方。麹を甕に移して塩水を加えたら、太陽の下に置く。晴れた日は蓋をとって天日に当てる。そして、かき混ぜない。日本では麹と塩水はしっかり混ぜるものです。でも、混ぜない。それでよいそうです。時間が経つと、麹は上に浮かび、下に液体が溜まる。そのまま四~五か月したら完成で、下の液体だけを引き出すそうです。溜醤油の製法に似ています。残った諸味には塩水を足して、味噌状のペーストにする。捨てる部分がない、というわけです。

「娘に食べさせたい」
続いての驚きは火入れです。薪の直火で、大きな釜の醤油がぐつぐつと沸騰しています。「えっ?!沸騰させるの?」が第一印象。しかも、この状態で八時間。日本の火入れは殺菌と香りづけが目的なので、沸騰も長時間の加熱も避けるのが定説。でも、こちらは煮詰めて水分を飛ばし、色の濃い濃厚な醤油に仕上げるのだそうです。同じ火入れという言葉でも、目指すものが明らかに違う。
一連の工程を見学させていただきましたが、工場はぴかぴかでした。毎日、週末、月末と掃除を重ねているそうです。どうしてそこまでするの?と質問すると、「自分たちのつくる調味料は、娘も食べる。手がけるすべてを、娘に食べさせたいと胸を張れるものにしたい」とナットさん。
2026.08.25

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