醤油の知識

醤油と塩の関係

なぜ塩が必要か?

塩は最古の調味料ともいわれ、人がおいしさを感じるために欠かせない要素です。また、醤油をつくる工程において塩分はとても重要で、他の雑菌から守る役割を担っています。塩分が高いため半年から数年以上もの醸造期間を経ることができ、仮に有害菌が混入してしまってもその菌が死滅してしまうほどの環境をつくってくれています。

適度な塩味はおいしい

冷蔵庫などの保存技術がない時代、塩漬けにすることで食べ物を長期保存することができました。その起源は縄文時代まで遡ることができるのですが、同時に食塩は人体にとっても不可欠な成分でもあります。熱中症予防のために塩を摂取するようにいわれますが、血液の浸透圧を保つことなど生命維持に関わる多くの役割を担っています。

そして、何よりも人がおいしいと感じるものには適度な塩味があります。鰹節と昆布でひいた出汁に少量の塩を加えることでぐっと味がしまってくるように、塩味はおいしさの重要な要素だと感じています。

海水と醤油の塩分差は約5倍

海水の塩分濃度は約3.5%といわれていて、濃口醤油は約16%です。その差は約5倍なのですが、実際に口に入れた時の感じ方としてはそれほどの差はないのではないでしょうか。むしろ、海水の方がしょっぱいと感じる方が多いかもしれません。

塩の成分をみてみると若干のミネラル分と大多数しめるのが塩化ナトリウムです。そのため、塩味をダイレクトに感じるのですが、醤油には塩味のほかに、うま味や甘味、苦味、酸味など様々な要素が溶け込んでいるので、しょっぱく感じにくいということができると思います。

醤油の種類の違いによる塩分濃度

うま味をおさえている(色の淡い)醤油ほど塩分濃度が高く、うま味の高い(色の濃い)醤油ほど塩分濃度が低い傾向はあると思います。中には塩分を低めにしている銘柄や意図的に高めにしている銘柄もありますので、一概に言い切ることはできませが、おおよそこのような傾向はあると感じています。

代表的なのは西日本でよく使われる淡口醤油で、見た目は淡いのですが塩分濃度は濃口醤油よりも高めで、実際に口に入れてみると数値以上にしょっぱく感じます。ただ、煮物などをする時ですと、濃口醤油よりも少ない量で塩味をつけることができるので、使用する量が少なくなり、なおかつ色も淡いので素材の彩りや風味を活かすことができる醤油ということができると思います。

減塩醤油

減塩醤油はしょうゆ品質表示基準によると、「しょうゆ100g中の食塩量が9g以下のものであって、かつ、健康増進法第31条1項の規定に基づく表示をおこなったもの」と規定されています。一般的な醤油を脱塩装置にかけて塩分を取り除いたもので一般的な醤油の半分の塩分量になっています。

塩カドの感じる醤油

醤油を舐めたときに舌をさすような塩味を塩カドと表現します。比較的安価に販売されている醤油はしょっぱく、塩カドがあるなどと表現されることがありますが、熟成期間が長くうま味の量が多くなるほど塩カドは感じにくくなるようです。 おいしい醤油を見分ける指標の一つになると思います。特に再仕込み醤油などの熟成期間が長くしっかりと管理されている醤油は、しょっぱさを感じないばかりか、ほのかに甘味を感じるものもあります。

醤油は少量で満足感

健康には減塩だという流れの中で、塩分の摂り過ぎを懸念される方もいらっしゃいます。厚生労働省のホームページには1日当たりの塩分摂取量の目標値は男性で8g(女性7g)と表記されていますが、8gの食塩を仮に醤油だけで取ろうとすると50mlになります。

お刺身を食べる時に小皿注がれる醤油が5ml程度なので、小皿に残った醤油を飲み干しても食塩換算で1gにも満たない計算になります。醤油には塩味の他にうま味や甘味が溶け込んでいるので、食塩をそのままなめるよりも少ない量で満足感を得られるとも言えると思います。

吸収される塩分と排出される塩分

そして、より重要な視点は口にする食塩の量よりも、摂取した塩分と排出された塩分の差であるはずです。塩は体にとっても必要な要素なので、必要な量だけを取り込んで不要なものは体外に排出をしてくれます。

ここで塩分排出を助けてくれるのがカリウムなどのミネラルで、昆布・わかめなどの海藻類、じゃがいも・里芋などのいも類、ホウレンソウなどの野菜類などです。お味噌汁の具材をイメージいただくと、具材たっぷりの味噌汁をとることは体にとって必要な塩分は吸収して不要分は排出させることを促進させることにもなっていて、昔からの日本人が食していた組合せはとても理にかなっていると実感します。