塩を上げるか、アルコールを足すか
「アルコールの入っている醤油は、よくない。だから、入っていないものを選びましょう」
——そういう話を、何度も耳にしてきました。
でも、それは本当なのだろうか。ずっと引っかかっています。
白カビは、悪者か
醤油にアルコールを入れるいちばんの理由は、産膜酵母——いわゆる白カビの発生を抑えるためです。昔、家庭で味噌や醤油を仕込んでいた時代には、表面に白カビが出るのはあたりまえのこと。そこだけすくって取り除いて、下の醤油はふつうに使っていたそうです。体に害を与える毒ではない。けど、醤油の風味を劣化させてしまう存在です。
ただ、今は事情が違います。スーパーなどの棚に並んだ商品に白カビが出れば、全品回収という話にもなりかねない。これは、とくに中小の蔵にとっては、大きなリスク。だから、白カビは防ぎたい、というわけです。
塩を上げるか、アルコールを足すか
白カビの発生を抑える要素は、大きく三つあります。「うま味」「塩分」そして、「アルコール」です。この三つのバランスで抑えているので、どれかひとつが低ければ、残りのどちらかを高めるしかない、という関係になっているそうです。
極端に言えば、塩分をぐっと上げてしまえば、アルコールは要らないわけです。でも、今は減塩の流れがあって、できるだけ塩分は下げたい。だから塩分を下げるかわりに、アルコールを足す——そういう判断をする蔵もあるわけです。
一方で、安く売られている醤油にアルコールが入っていることが多い事実もあります。うま味の濃い醤油をつくり、そこへ塩水を足して量を増す。価格を重視した商品設計をすれば、そうなるのは自然です。
線引きは、そんなに単純か
だから、「アルコールが入っているからダメ、入っていないからよい」という線の引き方は、そんなに単純ではないのだと思います。そこには、そうせざるを得なかった事情や、そうしないと決めた理由が、それぞれにあるわけです。
どちらが優れているという話ではなく、それぞれに事情がある。醤油の仕組みを知るほどに、そう感じるようになりました。——減塩や、添加をめぐる話は、また別の機会に、もう少し書いてみようと思います。
2026.07.08
ラベルの有無で決める前に、まず一本、自分の台所で試してみる。「減塩」という設計がどんな味なのか?再仕込醤油の減塩です。
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