まったく売れなかった商品が、蔵の屋台骨になるまで
「うちの売上を支えているのは、先代がつくった商品なんですよ」
醤油メーカーの方と話していると、こういう言葉をよく耳にします。「先々代が」という方もいる。30年とか40年とか世代を超えたロングセラーが、その蔵の屋台骨になっている、というケースです。
愛知県の日東醸造といえば白醤油の専業メーカー。「しろたまり」という商品で知っている、という方も多いかもしれません。この「しろたまり」こそ、醤油業界ならではの商品づくりを象徴しているように思うのです。
売れなかった商品を、続けるということ
社長の蜷川洋一さんに話を聞くと、先代と共に開発した「しろたまり」は、まったく売れなかったそうです。それも数年間、いや10年以上?!も。大企業だったら、費用対効果があわない、やめましょう、となるのが普通の判断だと思いますが、蜷川さんは「絶対にやるんだ」と、続けてきた。
十人、二十人の仕込み
続けるためにやってこられた活動の一つが仕込みワークショップです。1回あたり10人から20人。参加者が自分の手で「しろたまり」を仕込み、それぞれの自宅に持ち帰って発酵させる。手を動かしてもらいながら、日東醸造のこと、愛知県のことを、社長自らが語る。
参加された方は、これまでに3,000人を超えているそうです。少しずつ「しろたまり」ファンが増え、今では製造が追いつかない。海外からも評価が高く、蔵を増設しないと、という状態になっているといいます。そして、息子の泰輔さんにこの「しろたまり」が引き継がれようとしています。
でも、考えてみれば、ずいぶん気の長い話です。一度に数万人へ届けるのではなく、目の前の10人、20人に伝えていく。その小さな活動が積もりに積もって、今の大きな流れになった ―― 売れない期間を「耐えた話」として聞いてしまいがちですが、現場に立ち続けた蜷川さんの取組み自体が、商品をつくる工程だったのかもしれません。
2027.07.14
しろたまりワークショップの様子
https://s-shoyu.com/knowledge/knowledge-10361/
しろたまり100ml(日東醸造・愛知県)
https://store.s-shoyu.com/products/sy073


