群馬の組合115周年で聞いた、樋口直哉さんの話

「醤油の売り場に行くと、何を選んだらいいかわからない」

昨日、群馬県醤油味噌工業協同組合の115周年の記念の集まりがありました。講師として話をされたのが、作家であり料理家でもある樋口直哉さん。感覚で語ることがほとんどなく、科学的で論理的な語り口。相変わらず、すごかったです。

テーマは「しょう油の魅力をどう伝えるか?」。そこで樋口さんが投げかけたのは、生活者の声でした。「醤油売り場で、何を選んだらいいのか、わからない」。そして、多くの醤油メーカーが自社の醤油を「うちの醤油は濃厚でコクがある」と説明する。表現が画一的すぎるのではないか、と。もう本当に、ごもっともだなと思いました。

どうして、選べないのか?

どうしてこうなるのか。樋口さんも指摘していましたが、醤油が万能すぎるからだと思います。人が味覚として感じる苦味、酸味、甘味、塩味、うま味——この五つが溶け込んで、複雑さをもっているのが醤油です。世界のほかの調味料は、もっと役割がはっきりしている。酸味を加えたいからこれ、甘みを足したいからこれ、というように。

たとえばフランス料理には、苦味を出すためにフライパンでわざと素材を焦がすテクニックがあったり、長時間煮込むことで表現する味わいがあったりするそうです。醤油は、どの要素もわずかに、たくさん持っている。でも、要素が多すぎて、「醤油を加えたから、こう味が変わりました」とシンプルに表現するのが難しい。砂糖を入れたから甘くなる、のような説明できないわけです。

わずかな苦味、香り、酸味——などなどが、一度に溶け込むからこそ、説明が難しい。だから、「濃厚でコクがある」のような大きな表現になってしまう。

乳酸発酵の過程でつくられる、有機酸。これが多いほど味のキレがよくなると、樋口さんは言います。同じ醤油でも、有機酸の多いもの、少ないものがある。そういう観点でなら、確かに説明ができる。また、バターや乳製品と合わせるには?油で調理するときには?それぞれのシーンで、醤油のどの要素が大切になるかを分解していくと、表現の幅は広がっていくはず。

生活者が料理や食卓で使うときに、どんなメリットががあるのかを、具体的で分かりやすく伝えていく必要がある、そう強く感じました。そして何より、私自身、勉強不足なのを大きく実感できた時間でした。

2026.09.26

樋口直哉さんのYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCQUuY5wUy1ek3SLt0qaViyg

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