混ぜる濃口醤油と、汲みかける溜醤油
「ガンガン混ぜるよ」
醤油を搾る前の段階の諸味(もろみ)をかき混ぜる工程を、「櫂(かい)入れ」とか「攪拌(かくはん)」いいます。どのタイミングでするのか、どのくらいの強さでするのか。これは蔵元によって様々です。
「仕込んだときはたくさんする」「熟成の時期は少なくなる」。このあたりはなんとなく同じなのですが、一方で、「ガンガン混ぜるよ」という方もいれば、「出来るかぎり混ぜすぎない方がいい」という方もいて、本当にいろいろだなと感じています。
山川醸造の山川華奈子さんの連載、第13回「発酵って、わからないなぁ」は、この櫂入れがテーマ。ただ、山川醸造は溜醤油なので、混ぜる作業はしません。諸味の上に重石が置かれているので、かき混ぜる代わりに「汲みかけ」という作業になります。
華奈子さんは、同世代の蔵元たちとのやりとりで濃口醤油の事例を聞き、そこからヒントを得て汲みかけに応用してみたそうです。試したのは2つのパターン。けど、両方とも想定とは違った変化をたどり——。という内容です。
自分の言葉で話せる人
醤油づくりは体力が必要な作業です。特に溜醤油は、石をのせたり、諸味をスコップで掘り出したり。女性である華奈子さんには、どうしても限界がある。その作業に入っていること自体がそもそもの驚きだったのですが、それに加えて、汲みかけにも華奈子さんなりのアプローチをしていました。
全国の多くのつくり手と話をしていても、昔からこうだったと半ばルーティン的に作業を繰り返すよりも、「ちょっとこんなこと考えていて」とか、「小さな実験をしているんですけど」とか言いながら、過去の作業を疑って、新たな試みをしている方の表情は、いつも楽しそう。
自分なりの仮説を持って、この作業がどのようにおいしさにつながるのかを、いつも考えている方の醤油は、お客さんからの評価も高いという印象があります。
個人的には「自分の言葉で話ができること」と表現しているのですが、そのつくり手オリジナルのものづくりの思想や哲学を持っている人は、とても魅力的。そんな雰囲気を華奈子さんの連載から感じて、とてもうれしくなりました。
2026.09.27
「たまりやのかなこです」第13回│発酵って、わからないなぁ

