「醤油の起源はどこなんだ」と、よく聞かれる
「醤油の起源はどこなんですか?」
よくいただく質問です。けど、正直に言うと「醤油をどう定義するかによって答えが変わる」という、あいまいな答えしかできないのが本音です。
広く「塩漬けの発酵調味料」とすれば、そのルーツは縄文時代まで遡ります。食べ物を保存するために塩漬けにするのは、昔からの定番の知恵。魚を塩漬けにすれば魚醤(うおびしお)、肉なら肉醤(ししびしお)、野菜なら漬物の原型である草醤(くさびしお)、そして穀物を発酵させたものが穀醤(こくびしお)。これが味噌や醤油の祖先にあたるわけです。
奈良時代や平安時代の書物に出てくる「醤(ひしお)」は、おそらく今のような液体ではなく、もっとペースト状のもの。「鎌倉時代にお坊さんが中国から持ち帰った」という説も、当時の醤油は大豆主体の溜醤油に近いものだったように思います。
「濃口醤油」はいつ生まれたのか?
大豆と小麦をほぼ同量使って仕込む、今のような濃口醤油が生まれたのは江戸時代。ヒゲタ醤油の記録に、1697年(元禄10年)に小麦を等量用いる製法を取り入れたという記述が残っているそうです。この醤油が、握り寿司や天ぷら、鰻といった江戸前の食文化に受け入れられて発展していく。
逆に言えば、それまでの日本の醤油や、中国から伝わった最初の醤油は、大豆が中心で、小麦をあまり使っていなかったようです。
現在でも、中国の伝統的な醤油は、屋外に甕(かめ)を並べて太陽の下で仕込むスタイルが主流です。強い日差しで温度を上げて、麹の酵素分解を促して、大豆のタンパク質をうま味成分に分解させる、というわけです。
対して日本は、建物の中に置いて、四季の温度変化に合わせてじっくり発酵させていく。酵素分解だけでなく、酵母菌や乳酸菌の力で「香り」を醸し出す。この製法の違いが、そのまま日本と中国の醤油の違いになっている印象です。
そう考えると、日本の醤油は独自の進化をしてきていると感じていて、日本の醤油の起源はどこになるのか。なかなか難しい問題です。
2026.09.30

