大手メーカーの現場の方が「丸大豆が好きなんですよ」と言った

「私、丸大豆が好きなんですよ」

ある大手メーカーを訪ねたとき、立ち話の中でふと出てきたのがこの言葉です。醤油の原材料には、丸大豆と脱脂加工大豆があります。脱脂加工大豆は、大豆から油を抜き取ったあとのもの。人によっては、とても悪者扱いされる原材料です。職人醤油のサイトでも何度も書いてきましたが、正直なところ「いい加減、悪者にされすぎだろう」という感覚を持っています。

醤油には「特級」「超特選」といった等級があり、うま味成分である全窒素の量で測られます。「丸大豆と脱脂加工大豆、どちらがうま味成分の高い醤油をつくれるか?」と生産者に聞けば、100人が100人「脱脂加工大豆」と答えるはず。脱脂加工大豆は優秀な存在です。その上で、それぞれの生産者が「こういう醤油をつくりたい」という狙いに合わせて原材料を選んでいる。だから、脱脂加工大豆だから良い・悪い、という話ではないのだと思います。

蒸したての大豆のおいしさ

実際、日本で流通する醤油の約8割は脱脂加工大豆からつくられています。冒頭の言葉は、大手メーカーの現場の方との世間話の一言だったのですが、理由を聞くと「蒸したての大豆、あれ、めちゃめちゃおいしいんですよね」。あの味を知ってしまうと、丸大豆はすごくいい。ただ、醤油をつくることに関しては、脱脂加工大豆は本当に優秀——そう続けられました。数値の物差しと、自分の実感。そのふたつが、一人のつくり手の中に自然に同居していました。

どちらが真摯か、という問い

こういう話と同じように語られるのは「小さなメーカーにはこだわりがあって、大手にはこだわりがない」というニュアンスのものです。でも、大手は決められた規格に、きちっと合わせ続けることに、とてつもない努力を払っています。新しい設備を入れれば、条件はガラッと変わる。それでも、いつもの数値をどう出すか。想像がつかないほどの試行錯誤が、現場にはあると感じています。

小さな蔵も、大きなメーカーも、それぞれのやり方でものづくりに真摯に向き合っている。大手だから悪い、小さいから良い——その逆もまた、ナンセンスなのかもしれません。

2026.07.15

丸大豆と脱脂加工大豆
https://s-shoyu.com/knowledge/0503/