「やってみなはれ」― 木桶職人が、習ったやり方を捨てる理由

「習ったやり方は、ほぼやってない」

そう話すのは木桶職人・棟梁の坂口直人さん。2012年に大阪の藤井製桶所で修行して覚えたつくり方をベースに、変化しているというのです。捨てたわけではありません。全国から集まる職人たちと、毎年少しずつ改良を重ねてきた結果、別のかたちになったというのです。技術が生きて動いている、という感覚でした。

万太郎
「その改善って、どうやってやってきたんですか」

坂口さん
「一人でやってるんじゃなくて、全国から職人が集まるんですよ。意見を出し合う。『ここ、こうした方がいいんじゃない』『じゃあやってみよう。あかんかったら、やめたらいい』。その繰り返しで、どんどん合理的になってきてる」

万太郎
「職人同士のディスカッション、すごいですよね」

坂口さん
「基本、やってみなはれ。最初から『やめとこう』は、ないかもしれん」(動画9:00頃)

一人の親方が正解を握って教え込むのではなく、皆で持ち寄って、とりあえず試す。だめならやめればいい。この身軽さが、木桶づくりの技術を年々前に進めてきたのだと思います。心に残ったのは、坂口さんがまったく満足していないこと。削りの精度もスピードも最初とは比べものにならないほど上がっているのに、それでも「まだまだあるやろな」と考え続けている。そんな姿勢が印象的でした。

2026.07.17