福島県の醤油メーカーの勉強会
「お互いにしていることをしゃべらないと、得るものがないよ」
東日本大震災のあと、福島県の醤油メーカーはふさぎ込みがちだったそうです。日本酒の鑑評会で酒蔵が頑張っているのを見て、醤油業界でも勉強会がスタート。呼びかけたのは、福島県の醤油組合の工場長である紅林孝幸さんです。
最初は、評価の高い他県の醤油と自分たちの醤油を並べて、味比べをするところから。ただ、組合で日ごろから顔を合わせる仲だけど、同業者でもあります。手の内を明かすことにはハードルがあり、最初は何も話さない人が多かったそうです。
でも、紅林さんは「お互いにしていることをしゃべらないと、得るものがないよ」と訴え続け、今ではディスカッションの内容がどんどん高度化してきているといいます。
相馬市の山形屋商店の渡辺和夫さんは、この勉強会をきっかけに何度も農林水産大臣賞を受賞しています。「最初は、自分たちのような小規模メーカーが品評会なんて恐れ多いと思っていました。けど、福島の復興のために、風評被害を払拭するために、賞を取ることで少しでも変えられるのではないかと挑戦をしました」。
紅林さんは答えを教えてくれない
勉強会では商品名を隠して味比べをしながら、自社の醤油がどれかを当てるのだそうです。様々なテーマを提示する紅林さんを、渡辺さんはこう評します。「答えを教えてくれないんですよ」。でも、紅林さんがぽろっと話したことがひっかかって、また悩む。調べる。また相談をする。その繰り返しなのだとか。
そのことを紅林さんに聞くと、一緒に考えるスタンスを大切にしているとのこと。メーカーごとに設備が異なるので、ノウハウは同じではない。必ず差があるという前提で、一つのヒントでもいいから持ち帰ってほしい、という気持ちなのだそうです。
渡辺さんは、勉強会で何でも話す側の人。いまではメンバー同士で冷却温度や時間まで聞き合っている。逆に、自分の火入れの温度もかえしの作り方も、聞かれれば全部話す。「しゃべったもん勝ちです。しゃべれば、それだけ返ってきますから」。そう話されていたのが印象的でした。
2026.09.15

