ウイスキーは価値を高めるため、醤油は規格に合わせるため
醤油のブレンドは何のため?
ウイスキーには、個性の異なる原酒をブレンドして、より価値の高いものを作るブレンデッドウイスキーがあります。そこにはブレンダーという方がいて、ブレンドすることで価値を高めています。
コーヒーもそうですよね。ブレンドコーヒーは、単体では出せない理想のハーモニーを作る。欠点を補うというより、1+1を3にする調和の技術。
醤油業界でも、ブレンドはよく行われています。ただ、醤油の場合は、規格に合わせるという目的のほうが大きいように感じます。
色や食塩の濃度、うま味成分といった指標に合わせるために、ブレンドをします。そもそも醤油は微生物が作る発酵調味料なので、その年やロットによっても出来栄えが変わる。それを調整するために、醤油同士をブレンドすることもあれば、塩水を加えることもあります。
ここで求められているのは「出荷する規格に合わせる」ということ。だから醤油業界では、ブレンドしていることをあまり表に出さない傾向があるような気がしています。
「日本酒はいいな」
以前、ある醤油屋さんが「日本酒はいいな」と言うので、「どうしてですか?」と聞いてみました。日本酒は嗜好品なので自己主張していい。けど、醤油は縁の下の力持ちだから、前に出てはダメなんだ、主張してはダメなんだ、と言うのです。
もう少し話を聞いていくと、昔、車がなくて輸送が困難だった時代には、その土地で作ってその土地の人たちに販売するのが当たり前だったそうです。「今年、すごくいい醤油ができた」と思って飲食店に持って行くと、「いつもの醤油と違うぞ」と怒られたそうです。
料理人は、自分のレシピが決まっています。「醤油がこれくらいなら、他の調味料はこれくらい」というバランスがあるので、いつも通り同じものを持ってきてくれないと困るというのです。
そのため醤油メーカーにとっては、同じ規格のものを出すのが当たり前になっています。今年はすごくいいものができたとしても、塩水で薄めるなどして、いつもと同じ規格で出荷する。それがお客さんのためになっていた、というわけです。
規格を揃えるのは大切。でも、別の評価軸があってもいいように感じています。
2026.10.28

