日本は一つを深める、と中国の料理人は言った
料理人目線の日本と中国の違い
先日、中国を訪れたとき、現地の料理人と話す機会がありました。
「日本の料理のすごいところはどこだと思う?」と聞いてみました。すると、「日本は一つの料理をぐっと深める。その探求心はとても尊敬している」と。ただ、さらに質問を続けていくと、本音がこぼれてきました。
「でも日本は、調理法が少ないし、使う食材の種類も少ないよね」と。
中国料理の宴会では、前菜だけで数種類。、その後も多くの皿が続きます。そのとき大切にしているのが「重複しないこと」とのこと。調理法も素材も、重ならないようにする。それが中国の料理人の誇りなのだと言っていました。
そして笑いながらこう続けました。「扱う調理法も素材もあまりに多いから、一つひとつを極限まで深めることができないんだ」と。日本の料理と対比しながら、褒めているのか、嘆いているのか。おそらく両方なのかもしれません。
おもてなしの作法にも、違いが
中国には、食べきれないほどの料理を出すことがもてなしの証しという文化があります。料理をすべて食べてしまうと「まだ足りなかった」とホストのメンツを傷つけることになる、と彼は教えてくれました。食べ残しは「満腹になるまでもてなしてくれてありがとう」の表明でもある、と。ただ、その習慣は今、大きく揺らいでいるそうで、中国政府は食品廃棄削減キャンペーンを展開し、食べ残しを規制する法律まで生まれているそうです。彼自身も「若い世代はもう気にしない人が増えた」と言っていました。
一方、日本には「もったいない」という言葉があります。自然からいただく恵みを使い切る、食べきる。その感覚が料理の根底にある。多様さでもてなす文化と、一つを深める文化。どちらが優れているという話ではなく、同じ「丁寧にもてなす」という行為が、違う形になるのだと、その料理人との対話で改めて感じました。
2026.06.61

