職人醤油の蔵元

ミツル醤油醸造元

若き蔵人が自社醸造を復活

醤油業界の若手ホープといえば?と問われれば、城 慶典の名前を挙げたいと思います。大学入学前から自社での醸造を復活させる決意をして、着実にチャレンジを積み重ねている若きつくり手の現在進行形の物語です。

福岡県糸島市にある醤油蔵。

仕込みを復活させるということ

このサイトで2010年から連載いただいている「醤油仕込み復活 挑戦の奮闘記」。その城さんの醤油がいよいよ2013年2月に初搾りの時を迎えました。

「何が珍しいの?」と思われるかもしれませんが、このように仕込みを再開することは醤油業界ではとても珍しいことです。ミツル醤油は40年前に自社醸造をやめ、協業工場から醤油を購入し独自の味付けと火入れをする方式に転換しました。

これは昭和38年に制定された「中小企業近代化促進法」にそったもので、醤油の安定供給と品質向上に大きく貢献した全国的な動きだったのです。

城 慶典。業界内でも大きな注目と期待をされる若きつくり手です。

醸造には場所とお金がかかる

そのためミツル醤油には、仕込みに使う道具や設備がなくなっていました。醸造業には広い空間が必要不可欠なので、まず場所を確保しなくてはなりません。仕込みの作業をする場所、麹をつくる麹室、発酵熟成させるための木桶を並べる場所・・・。

そして、道具や設備を整える段階になると、大豆を蒸す設備、小麦を炒る設備、木桶の修繕、搾る設備・・・しかも、商品が売れて商品代金を回収できるのは1年とか2年後になるわけです。これらの投資は大きなリスクも伴います。

それらを背負って仕込みの復活に挑むのはとても稀な事で、城さんが業界内からも注目されている理由なのです。

蒸しあがった大豆と炒って砕いた小麦、種麹を混ぜあわせます。
このような状態にして室の中へ。

城 慶典という男

「福岡の醤油屋で城くんって知ってるかい?」と各地の醤油蔵で質問されます。普通なら他蔵の話題があがることは少ないのですが、なぜか様々な地域の生産者の口から「城 慶典」という名前が出てくるのです。

高校生の時に、「いつか自社醸造を復活させる!」と決意した城さんは、東京農業大学醸造学科に進学、長期の休みの度に各地の醤油蔵に出向き、泊まりこみで醤油づくりの手伝いをしていたのです。

「城くんは、うちで醤油つくっていたんだよ!」という蔵元は全国各地にあり、皆が師匠や親のような眼差しで城さんの挑戦を見守っているのです。

極力清潔に保ちたいという考えから、桶の外側に「柿渋」を塗ってあります。

代々伝承されているつくり方

醤油のつくり方の基本的なところはどの蔵も同じです。ただ、細かい部分は違います。麹づくりの温度管理や時間、使用する道具、諸味を撹拌する頻度や桶の管理の仕方など・・・

一般的に醤油づくりは家業として続いていることが多く、その蔵の「代々伝承されているつくり方」があって、それを受け継ぎながら少しづつ改良を加えていくものです。

ところが、城さんの場合は受け継ぐべき「幹の部分」がなく、しかも、福岡県糸島市の土地にあわせた最良の方法を導きだしていかなくてはならないわけです。

二回の夏を超えて諸味が熟成されます。

だけど、それがないので・・・

学生時代から各地の蔵のつくりを体験しているため、それぞれの良い部分を取り入れて独自の工夫を施しています。

自分が良いと感じたものは積極的に取り入れて、時には「どうしてこのような手法をとっているのか?」と、とことん質問し、時には実物を送ってもらい研究を重ねたりと、柔軟な姿勢が城さんのスタイルです。

この仕込み方は城さんのオリジナル。昔ながらの麹蓋はこれよりもっと小さく片手で持てるほどですが、底もメッシュ状にして工夫を凝らしています。
約3日かけてこのような状態に。麹菌が繁殖して見た目も変わります。

大胆に大きくした麹蓋。

例えば、「麹づくり」は醤油づくりにおいて、最も重要ともいえる工程です。ここで使われる伝統的な「麹蓋」という道具を、大胆に大型化し底板部分をメッシュ素材にしています。

「均一に温度管理するにはこの形が良いと思いました。元々はある醤油屋さんで見せていただいたものです。昔はメッシュ素材がなかったので使えなかったかもしれませんが、過剰な発熱をコントロールするには理にかなっていると感じました。自分がするならぜひこの方式にしたかったのです。」

圧搾するために諸味をくみ出す様子

進化する醤油

2011年に初めて仕込んだ醤油が2013年2月に初搾りをむかえました。城さんが一年間修行をした広島県の岡本醤油。そのご主人と二人の息子さんたちが応援に駆けつけて、「本当に純粋ないい醤油だなぁ!」としみじみ感想を述べていました。

「特に諸味の状態がいい。これだけ良いのだから、出来る限りこの味を製品にした方がいいと思う。火入れは出来る限り低温で行なって・・・」と興奮気味に話す程でした。

初めての圧搾の日。修行をした広島県にある岡本醤油のメンバーも駆けつける。

さらによいものを目指して

城さんはなおアグレッシブです。「実際に手がける程に改善点は見えてくるものです。経験が浅い分、修正できる部分はどんどん修正しているつもりです。来年の搾りは必ず今年よりも良い物にします!」そう力強く語る城さん。

来年は今年より、もっと美味い。進化し続ける醤油といえるかもしれません。

 

若き造り手が挑んだ渾身の一滴

72
生成り、こいくち 100ml
大豆、小麦、塩の全ての原料が九州産で、木桶で2年間熟成させた天然醸造醤油。甘みのある醤油が好まれる九州の土地で、シンプルな醤油造りに挑戦する若き造り手の渾身の一滴。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩

若き造り手が挑んだ渾身の一滴

79
生成り、うすくち 100ml
大豆、小麦、米は福岡県糸島市産で、塩は沖縄のシママース。甘みのある醤油が好まれる九州の土地で、シンプルな醤油造りに挑戦する若き造り手の渾身の一滴。

価格 : 500円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩、米

若き造り手が挑んだ渾身の一滴

80
生成り、さいしこみ 100ml
大豆、小麦は福岡県糸島市産で、塩は沖縄のシママースと佐賀県の一の塩。甘みのある醤油が好まれる九州の土地で、シンプルな醤油造りに挑戦する若き造り手の渾身の一滴。

価格 : 600円+税
原材料 : 大豆、小麦、食塩
この蔵元への直接のお問い合わせ
有限会社ミツル醤油醸造元
〒819-1601 福岡県糸島市二丈町深江925-2
TEL092-325-0026  FAX:092-325-0654
http://www.mitsuru-shoyu.com/