先味と後味──日本料理とインド料理の時間観

仕込みはいつしますか?

「仕込みはいつしますか?」と岡村恵さんがバラッツさんに聞いたとき、「当日で大丈夫ですよ」と返ってきたそうです。

恵さんは日本の料理人。2〜3日前から仕込みをして、素材に味を染み込ませていくのが自分たちの流儀だと思っていたので、その答えに衝撃を受けたと笑っていました。もちろん、インド料理にも事前に仕込みをしておく料理もあります。ただ、バラッツさんの説明はこうでした。インドでは、神様へのお供え物は出来立てが一番良いとされている。料理も、作りたてを最上とする感覚がある、と。同じ「丁寧に作る」でも、時間の使い方が違うなぁと。

先味と後味

先日の「スパイス×醤油」のイベントでの一幕だったのですが、こめみそしょうゆアカデミーの堀田雅湖さんが「先味と後味」という話をされていました。口に入れた瞬間に感じるのが先味、あとからじわっと感じるのが後味。この概念と、恵さんとバラッツさんのやりとりがすっと腑に落ちました。

時間をかけて仕込み、素材に味を染み込ませる日本料理は、後味で感じる方向に向かっていく。一方、スパイスは先味として最初にドーンとくる。今回のイベントで実際に食べてみて、スパイスの主張の強さは存分に実感しました。同じスパイスと素材を、インド人と日本人の料理人がそれぞれ使ったとしたら、まったく違う料理が出てくるような気がして、そんな妄想も楽しかったです。

醤油はどちらかといえば後味の調味料だと思います。だからスパイスとの相性を考えるとき、「つなぎ」になる素材が入るとよりよくなる。この話題もイベントの中で出たので、また別の機会に書こうと思います。

2026.06.18