甘い醤油より先に、甘い味噌と甘い酒があった(なぜ九州の醤油は甘いのか?)
醤油の日の集い
10月1日は醤油の日。業界関係者が集まる「醤油の日の集い」が開かれ、学習院大学教授の宇都宮由佳さんの記念講演がありました。テーマは「九州しょうゆはなぜ人を惹きつけるのか」。とても勉強になる内容でした。
九州の醤油は、いつから甘いのか? 今まで九州の醤油メーカーの方に伺っても、「よく分からない」が、たいていの答えだったのですが、新しい切り口を聞くことができました。
宇都宮さんの研究によると、転換点は戦争だったそうです。戦前の醤油は甘くなかった。戦中は物資難で、アミノ酸液と甘味料を使った醤油が使われるようになる。そして、戦後、甘くない醤油をつくれるようになったけど、「辛い(しょっぱい)」と売れなかった。甘い醤油が売れるので、各社がその流れで発展してきた、というわけです。
麦・酒・芋
では、九州の人たちはなぜ甘さを受け入れたのか。そこには3つの素地があったのではないかというのです。
一つ目は麦味噌。今でも九州では麦味噌が好まれていると思います。糖化力が高く、塩分が少ない。あっさりとした甘みが特徴です。日常の甘さのベースとして、麦味噌がもともと存在していたというわけです。
二つ目は灰持酒(あくもちざけ)。焼酎が流通するより前からあった酒。みりんのような濃厚な甘さが特徴です。熊本の赤酒などが有名ですが、木灰を使ってつくる酒で、お正月のお屠蘇にも使われているものです。
三つ目は唐芋、さつまいもです。1600年代初頭に中国から琉球、薩摩へと伝わり、1705年には鹿児島で大量に栽培されるようになったそうです。糖を含み、調理すると自然な甘みが出る。薩摩の地域で、享保・天明・天保の飢饉でも餓死者がほとんど出なかったのは、さつまいもの存在が大きかったのだとか。日常的にさつまいもを食べていたことも、甘い醤油を受け入れる一因になっていたのでは、という話でした。
講演の結論は「砂糖・黒糖に加え、麦・酒・芋という何層もの甘さの体系がある」というもの。一つの大きな理由というよりも複数の甘さを受け入れる素地があった。そう考えると、すっと腑に落ちました。
2026.10.02
九州の醤油が甘い理由
https://s-shoyu.com/knowledge/0418

