015│醤油が欲しかったわけではないのに

塩釜の太田與八郎商店・太田岳志さん、大崎上島の岡本醤油醸造場・岡本康生さんと、フランス視察に行ってきました。現地でわたしたちを受け入れてくださったのは、フランス在住でKIOKE SHOYUの海外窓口を担当するオレガン愛美さんです。

1週間の旅程の中で、一番心配していたのがiRASSHAiさんでの試食販売でした。パリのルーブル美術館近くにある日本食材店。日本文化に強い関心がある方だけでなく、普段の暮らしの中でちょっと日本のものを楽しみたい、そんな方々も訪れるお店です。醤油にどれくらい興味を持ってもらえるのかも分かりません。わたしの英語力で果たして会話はできるのか?

そんな緊張の中で始まった試食販売。最初はなかなか試食をしてもらえずにいましたが、すぐにフランスの方々のあたたかさを感じました。こちらから「Bonjour!」と挨拶すると、興味がなさそうな方もにこっと笑って返してくださるんです。

せっかくなら味見だけでもしてもらいたいな、と思い、慣れてきたころ「Would you like to try soy sauce?」と聞いてみました。

「いやいや、結構よ」という反応の方もいらっしゃれば、「醤油ねぇ……しょうがないわね」という顔で付き合ってくださる方も。

そんなとき、半年間の準備の中で作った写真とフランス語の説明入りの資料が、とっても役に立ちました。木桶や仕込みの写真を見せながら話すと、みなさん説明を読みながら耳を傾けてくださいます。

中でも印象に残っているのが、あるフランス人のお母さんです。

最初は「今日は醤油を買いに来たわけじゃないのよ」と、ちょっと訝しげな顔をされていました。それでも試食に付き合ってくださって、木桶の写真を見せながら話しているうちに、だんだん表情が柔らかく変わっていきました。なんと、その方のおじいさんもワイン用の大桶職人さんだったそうです。

3社の醤油をすべて味見した後、何やら考え込んだ顔でフランス語を話されていました。愛美さんに訳していただくと、

「わたしがどれか一つを選んだら、ほかの二人は悲しんじゃうかな?」

とおっしゃっていたそうです。なんてお優しい。

蔵元3人で笑いながら、気にせず気に入ったものをお選びくださいとお伝えしたところ、一番大きなサイズの岡本醤油さんの濃口を手に取られました。

最初は乗り気じゃなかったのに、大きなサイズでも買いたいと思える醤油に出会ってもらえたことが、とっても嬉しかったです。

しかも、お会計の後、わざわざ戻ってきてくださったんです。

「あったわ! おじいさんと桶の写真、見つかったわ!」

見せていただいた写真には、底板の直径が2メートル以上ありそうな大きな木桶。どこか当社にある桶と似たものを感じました。

わたしも祖母と樽が写った古い写真を見せて、また少し交流しました。 

他の方々も試食や説明を通して表情が変わり、それぞれ気に入った醤油を選んでくださいました。パリで普通に暮らす方々にも KIOKE SHOYUの魅力が伝わるのだと実感できました。

ただ、心残りもあります。

本当は、醤油を普段どんな料理に使っているのか、もっと聞いてみたかったんです。そのためにフランスまで行ったのに。

しまったなぁ。

次はもっとお話しできるように。先日蔵に来てくださった方が「英語の練習に付き合うよ」と言ってくださっていたので、お願いしてみようと思います。 

2026.11.06

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