実家の蔵にあったのは、火入れと瓶詰めの設備だけだった
「醤油づくりにおいて、新しい発見みたいなことですよね。ないですね」
福岡のミツル醤油醸造元、城慶典さんの言葉です。十数年の試行錯誤を振り返って、面白さを見つけた瞬間や大きな発見はありましたか。そう聞いた私に、少し間を置いてから返ってきたのがこれでした。
数えきれないほどの試行錯誤を積み重ねてきているはずなのに、こう答えるのはいかにも城さんっぽいなと感じます。
醤油づくりの肝になる種麹も、いろいろな種類を変えながら試してきた。酵母も添加してみたけれど、思ったほど差が出なかったので今はしていない。乳酸菌は冬以外だと一気に増えてしまうので、これではちょっとできないなと判断をしているんですよね、と平然な顔をしながら言います。
何もやらないのももったいない
自社での醤油の仕込みを復活させるために大学に進学し、長期休みの度に各地の蔵元に出向いて作業を共にさせてもらう。地元に戻って、製造設備もひとつずつ揃えてきたのですが、この経緯自体が他の蔵元とは違ったもの。
何もやらないのももったいないから、と話しながら、毎年何かしらを変えている城さん。試行錯誤するのが当たり前になっているのだと思います。今年は料理人がよく使う浄水器を一シーズン借りて仕込んでみるそうです。でも、城さんに言わせると、「ただ水替えてるだけなんですけど」と、なります。
出会ったのが2008年。あと二年で二十年になります。そんな城さんにインタビューをした動画なのですが、ご覧いただくと、そんな城さんの人となりを感じていただけると思います。ぜひ。
2026.08.11

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