教科書のような話なのに、質問とサインの行列が止まらなかった

終わっても止まらない質問と、サインの行列

阪神百貨店の木桶イベントでは、毎年、ワークショップをたくさん開催しています。1日5回を6日間、あわせて30コマ。醤油や味噌の仕込み、味比べなど内容はさまざまで、それぞれ担当する蔵元が違います。そのため、同じテーマでも、蔵元が変われば中身もガラッと変わる。個性がそのまま出てきます。

その中でも毎回大人気だったのが、広島・岡本醤油の岡本康史さんのセミナーです。終わったあとも質問が止まらず、サインを求める方の行列が途切れません。

話のスタイルは、ある意味いちばん「講義」に近いと思います。事前に用意される資料も大学の講義顔負けの充実ぶり。ただ、会場がずっと大爆笑、という感じでもありません。参加者のみなさんは、誰もが真剣に聞き入っています。

「どう話せばいいでしょうか」

セミナーに初めて登壇する若い蔵元から、アドバイスを求められたことがありました。そのとき伝えたのは、「主語が自分になるような話」でした。インターネットにあるような情報を、ただ読み上げるのではなくて、自分が思ったこと、考えたこと、感じたことなど。自分にしか話せない内容。主語を自分にして語ることが、私の考える「自分の言葉で話す」です。

岡本さんの話は、一見すると教科書的な内容。けど、語られていることのすべてが、岡本さん自身の試行錯誤の結果で、すべて「岡本さんの言葉」になっている。そんな印象を受けました。だから、同じ内容を他の蔵元が話しても、同じ結果にはならない気がします。

お客さん全員が真剣にメモを取りまくり、最後は時間の許すかぎり残って質問を続ける。あの光景は、本当に一見の価値がありました。岡本さんのセミナーを見て、自分の言葉で話すことの大きさを、あらためて感じています。

2026.10.19

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